マス3 届け出る

開業の届け出ガイド:開業届・青色申告・保険と年金

ひとことで言うと

全員が出すのは開業届。青色申告にしたい人は申請書も。会社を辞めた人は健康保険と年金の切り替えを。出す前に「許可がいる仕事か」「副業OKか」を確認し、開業日からは帳簿をつけ始めます。

最終確認日:

ポンちゃん
ここはポンちゃんの出番!書類はたくさんあるように見えるけど、自分に関係あるのは数枚だけだよ。

まずは全体の流れをつかもう

開業の前後でやることを、時間の順にならべました。自分に関係ないものは飛ばしてOKです。

  1. 開業する前
    • 勤め先の就業規則で、副業が認められているか確認する(副業の人)
    • 自分の仕事に許可や届出が必要かどうか確認する
    • 失業手当を受け取るつもりなら、ハローワークに相談しておく(辞める人)
  2. 開業日
    • 開業日を決める(開業届に書く日。ここから帳簿をつけ始める)
  3. 辞めた日の翌日から14日以内
    • 国民健康保険と国民年金の手続き(任意継続を選ぶなら20日以内)
  4. 開業してすぐ(おそくとも2か月以内)
    • 開業届と青色申告承認申請書をいっしょに出す(青色の申請は、1月16日以後に開業したら2か月以内)
    • 都道府県への事業開始等申告書(東京都は15日以内。地域ごとに確認)
  5. 翌年の確定申告期限まで
    • 1年分の確定申告(開業届の最終期限もここ)

届出を出す前に、3つだけ確認

許可や届出がいる仕事じゃない?

口にするものや体にふれるものをあつかう仕事、人材派遣、貸金業などは、始める前に許可・登録・届出が必要なことがあります。中古品を仕入れて売る商売(古物営業)は、警察署を窓口に公安委員会の許可が必要です。

短いイベントの出店でも必要になる場合があります。迷ったら、保健所や都道府県の担当窓口に問い合わせましょう。

勤め先で副業はOK?

会社員のまま始める人は、就業規則で副業のルールを確認しましょう。届出や許可がいる会社もあります。税務署への開業届とは別の話です。

家を仕事場にしても大丈夫?

賃貸住宅の場合、契約で「住むため」に使い道が決められていることがあります。看板を出す、お客さんを呼ぶ、といった使い方をするなら、事前に契約内容を確認しましょう。

あなたが出す届出チェックリスト

自分にあてはまるグループだけ見ればOKです。期限は赤い「期限」ラベルの横に書いています。

全員が出す

個人事業の開業・廃業等届出書(開業届)

出す先
税務署
期限
事業を始めた年の確定申告期限まで

「事業を始めました」と税務署に知らせる届出で、所得税法(第229条)で提出が決められています。マイナンバーを書く欄があり、紙で出すときは本人確認書類の提示か写しの添付も必要です(e-Taxなら不要)。期限は以前「開業から1か月以内」でしたが、今は確定申告期限までになりました。古い情報のままの解説も多いので注意してください。

青色申告をしたい人

所得税の青色申告承認申請書

出す先
税務署
期限
青色申告をしたい年の3月15日まで(1月16日以後に開業した場合は、開業日から2か月以内)

最大65万円の控除などの特典を使うための申請。開業届と同時に出すのがおすすめです。

インボイスを発行したい人(任意)

適格請求書発行事業者の登録申請書

出す先
税務署
期限
登録は任意。免税事業者は、登録を受けたい日を書いて申請する

取引先からインボイス(登録番号の入った請求書)を求められそうな人は検討します。登録すると消費税の申告が必要になります。登録するかどうかの考え方は「開業後」マスで解説します。

家族に給料を払う・人を雇う人

青色事業専従者給与に関する届出書

出す先
税務署
期限
家族への給料を経費にしたい年の3月15日まで(1月16日以後に開業した場合は、開業日から2か月以内)

青色申告の人だけの制度。生計をともにする15歳以上の家族で、ほぼ専業で事業を手伝う人への給料を、届け出た金額の範囲で経費にできます。その家族は扶養の対象から外れます。

給与支払事務所等の開設届出書

出す先
税務署
期限
人を雇って給料を払うことになった日から1か月以内

従業員や家族に給料を払い、源泉徴収をするようになったときに出します。人を雇う場合は、労働保険(労働基準監督署・ハローワーク)などの手続きが必要になることもあります。

会社を辞めて独立する人

国民健康保険の加入

出す先
市区町村の窓口
期限
会社の健康保険の資格がなくなった日(退職日の翌日)から14日以内

国民健康保険のかわりに、会社の健康保険を続ける「任意継続」(退職日の翌日から20日以内に申し出)や、家族の扶養に入る方法もあります(下で解説)。

国民年金の加入(第1号への切り替え)

出す先
市区町村の窓口
期限
退職日の翌日から14日以内

20歳以上60歳未満の人が対象です。あなたに扶養されていた配偶者(第3号)がいる場合は、その人の切り替えも必要です。

都道府県への申告(地域ごとに確認)

事業開始等申告書

出す先
都道府県税事務所
期限
都道府県ごとに違う。東京都は事業を始めた日から15日以内(都税事務所へ)

個人事業税のための申告です。東京都では、都内で個人事業を始めた人が都税事務所に申告します。ほかの地域は、お住まいの都道府県のホームページで対象と期限を確認してください。

開業届と青色申告は、いっしょに出すのがラク

開業届の期限には余裕がありますが、青色申告承認申請書の期限は短めです。1月16日以後に開業した人は、開業日から2か月以内。うっかり過ぎると、その年は青色申告の特典が使えません。

出す先は、納税地(ふつうは住んでいる場所)を担当する税務署です。e-Tax(インターネット)で出すほか、紙に書いて窓口に持っていくか、郵送することもできます。様式は国税庁のホームページからダウンロードできます。

カタカタ
開業届を出すときに青色申告の申請書もセットで出しておけば、期限切れの心配がなくなるよ。

「屋号」ってなに?つけたほうがいい?

屋号は、お店や事業につける名前のこと(例:「〇〇デザイン事務所」)。開業届に書く欄がありますが、空欄でも出せます。あとから決めてもかまいません。

屋号があると、名刺や請求書で事業らしく見えるほか、屋号の入った銀行口座をつくれる場合があります(口座の話は「お金の準備」マスで)。

会社を辞める人は、健康保険の選び方に注意

会社を辞めると、会社の健康保険から外れます。次のどれかを選んで、期限内に手続きしましょう。

国民健康保険に入る

会社の健康保険の資格がなくなった日(退職日の翌日)から14日以内。お住まいの市区町村の窓口で手続きします。

会社の健康保険を続ける(任意継続)

退職日の翌日から20日以内に申し出れば、最長2年間続けられる(退職日まで2か月以上続けて加入していた人)

協会けんぽの場合。会社が負担していた分も自分で払うので、保険料は原則として在職中の2倍になります(上限あり)。健康保険組合の場合は組合に確認してください。

家族の扶養に入る

収入の見込みなどの条件があります。家族の勤め先の健康保険に確認してください。

どれが安いかは前年の収入や家族の人数で変わります。お住まいの市区町村で国民健康保険料の見込みを聞いてから決めると安心です。

失業手当をもらう予定の人は、開業届の前にハローワークへ

失業手当(雇用保険の基本手当)は、次の仕事を探している人のための手当です。事業を始めると、原則として受け取れなくなります。ただ、起業する人向けの制度もあります。

再就職手当

事業を始めた場合も、待期(最初の7日間)が過ぎてから開始し、支給残日数が3分の1以上あるなどの条件を満たせば、対象になることがあります。

事業の開始日(準備期間があれば準備を始めた日)の前日までに失業の認定を受けている必要があります。自己都合で辞めて給付制限がある人は、待期が終わってから1か月の間に事業(準備)を始めると対象外です。条件はほかにもあるので、ハローワークで確認を。

受給期間の特例

離職後に事業を始めた人は、申請すると、事業をしている期間(最長3年)を失業手当の受給期間に数えないようにできます。申請は事業を始めた日などの翌日から2か月以内です。

あとで事業をやめて再就職活動するときに、失業手当を受け取れる余地を残す制度です。

ポンちゃん
どちらも、いつ事業を始めたかで結果が変わるよ。開業届を出す前に、ハローワークで相談してね!

開業したら知っておきたいコツ

帳簿は開業日からつける

青色でも白色でも、事業をする人は全員、記帳と保存が必要です。保存期間は帳簿は7年、領収書・請求書などの書類は5年。あとでまとめてやると大変なので、最初から会計ソフトに入れていくのがラクです。

開業前に使ったお金も経費にできる

開業の準備のために使ったお金(開業前の広告宣伝や市場調査、打ち合わせの交通費など)は「開業費」として扱えます。60か月に分けて経費にするか、好きな年に好きな額を経費にするか選べます(任意償却)。レシートは捨てずにとっておきましょう。

仕事用の口座とカードを分ける

生活費と仕事のお金が混ざると、帳簿づけが一気に大変になります。くわしくは次の「お金の準備」マスで、銀行やカードをくらべて紹介します。

お金の準備へ →

審査ものは会社員のうちに考える

独立した直後は収入の実績が少ないため、クレジットカードやローン、賃貸住宅の審査で不利になることがあります。必要になりそうなものは、辞める前に検討しておくと安心です。

マイナカードで申告がラク

マイナンバーカードがあれば、開業届も確定申告もe-Tax(インターネット)で家から出せます。確定申告はスマホからでもOK。税務署へ行く手間がなくなります。

副業の人は住民税に気をつける

副業の所得が増えると住民税も増え、会社に届く通知で副業が伝わることがあります。確定申告のときの選び方を「やらかし図鑑」で解説します。

やらかし図鑑へ →
カタカタ
開業後の確定申告や、将来の備え(小規模企業共済・iDeCo)は「開業後」マスでまとめるよ。

このマスのまとめ

  • 出す前に、許可がいる仕事か・副業OKかを確認する
  • 開業届は全員。期限は事業を始めた年の確定申告期限まで
  • 青色申告の申請は期限が短いので、開業届とセットで出す
  • 屋号は空欄でもOK。あとから決めてもいい
  • 会社を辞めた人は、健康保険と年金の手続きを14日以内に(任意継続は20日以内)
  • 失業手当をもらう人は、開業届の前にハローワークへ
  • インボイスの登録は任意。取引先しだいで検討する
  • 帳簿は開業日から。準備で使ったお金のレシートもとっておく